【トレーナー向け】PMRF(橋延髄網様形成)とは?
こんにちは。
パーソナルトレーニングジムNINE代表の原田です。
本日はPMRFの機能についての内容になります。
PMRF(橋延髄網様形成)とは?
**PMRF(橋延髄網様形成, pontomedullary reticular formation)**は、脳幹(特に橋と延髄)に存在する網様体の一部であり、運動機能や自律機能、意識状態の調節に関与する重要な神経ネットワークです。
1. PMRFの解剖学的位置
PMRFは、脳幹の橋(pons)と延髄(medulla oblongata)にまたがる網様体(reticular formation)の領域であり、多くの神経核や神経路が集まる場所です。網様体は内側(medial)・外側(lateral)・正中(midline)の3つの領域に大きく分けられますが、PMRFは主に**内側網様体(medial reticular formation)**に属します。
2. PMRFの機能
PMRFは、主に以下の機能を担っています。
(1) 姿勢と運動の調節
PMRFは、姿勢制御と随意運動の補助に重要な役割を果たします。これには以下の2つの経路が関与します。
• 内側網様体脊髄路(medial reticulospinal tract, MRST)
• 主に橋のPMRFから起こり、抗重力筋(伸筋)を促進して姿勢の安定を図る。
• 脊髄の**内側系(medial motor system)**に関与し、四肢の協調運動をサポート。
• 外側網様体脊髄路(lateral reticulospinal tract, LRST)
• 主に延髄のPMRFから起こり、抗重力筋を抑制する役割を持つ。
• 体の柔軟な動きやリラックスした状態を作り出す。
このバランスが崩れると、姿勢異常や歩行障害が生じる可能性があります。
(2) 眼球運動の制御
PMRFは、注視反射(gaze control)に関与し、特に急速眼球運動(サッカード)を調整する働きを持っています。
特に、PMRF内の「傍正中橋網様体形成(paramedian pontine reticular formation, PPRF)」は水平眼球運動の中心です。
(3) 自律神経機能の調節
PMRFは、呼吸・心拍・血圧の調節に関与する自律神経の中枢とも連携しています。特に、延髄の心血管中枢や呼吸中枢と結びついており、生命維持に不可欠な機能を担っています。
(4) 覚醒と意識の調節
PMRFは、脳幹網様体の一部として、意識状態の維持に関与する「上行性網様体賦活系(ARAS: Ascending Reticular Activating System)」の一部でもあります。
この機能が損なわれると、昏睡や意識障害が生じる可能性があります。
3. PMRFの障害と臨床的意義
PMRFが障害されると、以下のような症状が現れることがあります。
• 姿勢異常・歩行障害(網様体脊髄路の異常)
• 眼球運動障害(PPRFの障害)
• 水平注視麻痺(例: 一側のPPRF損傷 → 同側への眼球運動障害)
• 意識障害(ARASの障害)
• 呼吸・循環障害(延髄の自律神経中枢との関係)
例えば、脳幹梗塞や出血、脳外傷によってPMRFが損傷すると、これらの症状が出る可能性があります。
4. まとめ
• PMRF(橋延髄網様形成)は、脳幹(橋と延髄)の網様体の一部で、運動・姿勢制御、眼球運動、自律神経、意識の調節に関与する重要な領域。
• 網様体脊髄路を介して姿勢を制御し、PPRFと連携して眼球運動を調節。
• 呼吸や血圧などの自律神経調節にも関与し、意識の維持にも重要な役割を果たす。
• PMRFの障害は、歩行障害・眼球運動障害・意識障害・自律神経異常を引き起こす可能性がある。
PMRFは脳幹の重要な機能を統合するため、損傷すると重篤な症状が現れることが多いです。
ー執筆ー
パーソナルトレーニングジムNINE
NSCA認定パーソナルトレーナー
代表 原田拓人