【トレーナー向け】腸腰筋の解剖・機能・アセスメント・トレーニング・ストレッチの完全ガイド
こんにちは。
パーソナルトレーニングジムNINE代表の原田です。
腸腰筋(Iliopsoas)の解剖学的構造
腸腰筋は、大腰筋(psoas major)、小腰筋(psoas minor)、腸骨筋(iliacus)の3つの筋から構成され、股関節の屈曲や体幹の安定に重要な役割を果たす。
1.1 大腰筋(Psoas Major)
起始(Origin)
• 第12胸椎(T12)~第4腰椎(L4)の椎体側面
• 第12胸椎(T12)~第5腰椎(L5)の椎間円板
• 第1~5腰椎(L1~L5)の肋骨突起(costal processes)
停止(Insertion)
• 大腿骨の小転子(lesser trochanter)
作用(Function)
• 股関節の屈曲(hip flexion)
• 股関節の外旋(external rotation)
• 腰椎の前弯維持(lumbar lordosis maintenance)
• 骨盤の前傾(anterior pelvic tilt)
• 一側収縮時:同側の側屈(側方への傾き)
支配神経(Innervation)
• 腰神経叢(L1~L3)
血流供給(Blood Supply)
• 腰動脈(lumbar arteries)
• 腸骨腰動脈(iliolumbar artery)
1.2 小腰筋(Psoas Minor)※50%の人には存在しない
起始(Origin)
• 第12胸椎(T12)~第1腰椎(L1)の椎体側面と椎間円板
停止(Insertion)
• 恥骨弓線(pectineal line)
• 腸恥隆起(iliopubic eminence)
作用(Function)
• 腰椎の軽度屈曲補助(trunk flexion assist)
• 腸骨筋膜の緊張維持(fascia tension maintenance)
支配神経(Innervation)
• 腰神経叢(L1)
血流供給(Blood Supply)
• 腰動脈(lumbar arteries)
1.3 腸骨筋(Iliacus)
起始(Origin)
• 腸骨窩(iliac fossa)
• 仙骨翼(ala of sacrum)
停止(Insertion)
• 大腿骨の小転子(lesser trochanter)
• 大腰筋腱と結合(共通腱)
作用(Function)
• 股関節の屈曲(hip flexion)
• 股関節の外旋(external rotation)
• 骨盤の前傾(anterior pelvic tilt)
支配神経(Innervation)
• 大腿神経(L2~L4)
血流供給(Blood Supply)
• 腸骨腰動脈(iliolumbar artery)
• 内側回旋大腿動脈(medial circumflex femoral artery)
腸腰筋のアセスメント(評価)
腸腰筋の機能不全は、股関節の可動域制限、腰痛、骨盤の歪み、スポーツパフォーマンスの低下などを引き起こす。適切な評価を行い、筋力・柔軟性・姿勢の異常を特定することが重要。
2.1 トーマステスト(Thomas Test)
目的:腸腰筋の短縮を評価
方法:
1. 患者は仰向けになり、検者の指示で片膝を胸に引き寄せる。
2. もう片方の脚をベッドの外に垂らす。
3. 股関節の位置と大腿部の動きを観察。
評価基準:
☑︎正常:ベッド上に残る大腿部が床に対して水平(腸腰筋の短縮なし)
×腸腰筋の短縮:大腿部が持ち上がる、または骨盤前傾が過剰
×大腿直筋の短縮:膝が伸びてしまう
臨床的意義:
• 腸腰筋が短縮している場合、骨盤の前傾や腰椎前弯(過伸展)が見られ、腰痛のリスクが高まる。
2.2 アクティブ・ストレートレッグレイズ(Active Straight Leg Raise: ASLR)
目的:腸腰筋の筋力と股関節屈曲の可動性を評価
方法:
1. 仰向けに寝た状態で片脚をまっすぐ伸ばし、反対の脚は膝を曲げた状態にする。
2. まっすぐ伸ばした脚をゆっくり持ち上げる(股関節90度を目安)。
3. 動作のスムーズさ、可動域、補助的な動き(骨盤の動きや代償動作)を観察。
評価基準:
☑︎正常:脚をスムーズに持ち上げ、骨盤が安定
×筋力不足:脚が上がらない、または反対の骨盤が過度に傾く
×代償動作あり:腰が反る、腹筋が弱く骨盤が回旋する
臨床的意義:
• 腸腰筋の筋力が弱いと、腹筋群の代償が強くなり、腰椎の過伸展が起こる。
• 片脚のみ制限がある場合、左右の筋力バランスの不均衡が疑われる。
2.3 股関節の可動域評価(ROM: Range of Motion)
目的:腸腰筋の柔軟性や関節可動域を評価
方法:
1. 被験者を仰向けにし、検者が股関節を他動的に屈曲させる(パッシブROM)。
2. 骨盤が動かずに股関節がどこまで屈曲できるかを評価。
評価基準:☑︎
正常:120°以上の股関節屈曲が可能
×制限あり:120°未満で骨盤が前傾する
臨床的意義:
• 可動域が制限されている場合、腸腰筋の短縮や股関節周囲の筋の柔軟性低下が疑われる。
2.4 ダイナモメーターを用いた筋力テスト
目的:腸腰筋の最大筋力を評価
方法:
1. 患者は座位または仰臥位で股関節90°屈曲状態にする。
2. ダイナモメーター(筋力測定器)を大腿部の前面に固定。
3. 最大限の力で股関節を屈曲し、筋力を測定。
評価基準:
☑︎正常値:年齢・性別・体格に応じた基準値
×弱化:左右差が大きい場合、片側の筋力低下
臨床的意義:
• 腸腰筋が弱いと、歩行やスポーツ動作のパフォーマンス低下が起こる。
腸腰筋の機能的重要性
腸腰筋は、股関節の動作や姿勢維持において重要な役割を果たす。特に以下の点で重要。
股関節の運動機能
• 股関節の強力な屈曲筋(主動作筋)
• ランニングやダッシュでのストライド向上
• 階段昇降やキック動作に関与
• スポーツ動作(サッカー・陸上競技)でのパフォーマンス向上
体幹の安定性
• 腰椎の前弯を維持し、安定化
• 腹部インナーマッスル(腹横筋、多裂筋、横隔膜、骨盤底筋)と協働
• コアの強化により、腰痛リスクを低減
姿勢と腰痛の関係
• 腸腰筋が短縮すると、骨盤前傾が過剰になり、腰椎前弯が強まる(腰痛のリスク増)
• 逆に腸腰筋が弱いと、骨盤後傾・猫背になりやすい
• 長時間の座位で腸腰筋が短縮し、腰痛を引き起こしやすい
腸腰筋を鍛えるトレーニング
4.1 ハンギングレッグレイズ(Hanging Leg Raise)
• 目的:腸腰筋の強化、股関節屈曲筋群の強化
• やり方:
1. 懸垂バーにぶら下がる
2. 腹圧を入れ、膝を胸まで引き寄せる
3. ゆっくりと下ろす
• 回数:10~15回×3セット
4.2 ブルガリアンスクワット(Bulgarian Split Squat)
• 目的:片脚で腸腰筋を強化
• やり方:
1. 片足を後ろのベンチに乗せる
2. 前脚の膝を曲げ、股関節を屈曲
3. 元の位置に戻る
• 回数:片脚10回×3セット
腸腰筋のストレッチ
5.1 ランジストレッチ(Lunge Stretch)
• 目的:腸腰筋の柔軟性向上
• やり方:
1. 片膝を立て、もう片方を後ろに伸ばす
2. 骨盤を前に押し出し、腸腰筋を伸ばす
3. 30秒キープ
• ポイント:
• 背筋を伸ばし、骨盤を意識する
• 呼吸を止めない
5.2 トーマステストストレッチ(Thomas Test Stretch)
• 目的:腸腰筋の短縮チェックとストレッチ
• やり方:
1. 仰向けになり、片膝を抱える
2. もう片方の脚をベッドの外に垂らす
3. 30秒キープ
まとめ
腸腰筋のアセスメントの重要性
腸腰筋の機能不全は、姿勢の崩れ、腰痛、股関節可動域制限、スポーツパフォーマンスの低下を引き起こす可能性がある。
☑︎筋力・柔軟性・可動域を適切に評価することで、問題点を特定し、効果的なトレーニングやストレッチを処方することができる。
☑︎デスクワークが多い人は、腸腰筋の短縮をチェックし、ストレッチを習慣化することが重要。
☑︎アスリートは、腸腰筋の筋力バランスを評価し、強化することでパフォーマンス向上につなげることができる。
腸腰筋の適切なアセスメントとトレーニング・ストレッチを組み合わせることで、股関節の機能向上・体幹の安定化・腰痛予防・スポーツパフォーマンス向上に大きく貢献できる。
ー執筆ー
パーソナルトレーニングジムNINE
NSCA認定パーソナルトレーナー(https://nsca-japan.or.jp/)
代表 原田拓人